手作り豆腐がつなぐ、人と街のぬくもり。大和市「とうふ工房 豆畑」

大和市鶴間の住宅街の一角に、静かに、しかし確かな存在感を放つお豆腐屋さんがあります。

「とうふ工房 豆畑(まめばたけ)」
名前の響きどおり、まるで畑から大豆の香りがふわりと届くような、やさしい雰囲気のお店です。

とてもおしゃれで温かい雰囲気が漂う外観。お店の前は所々に木のぬくもりを感じます。

店内に一歩足を踏み入れると、音楽好きの店主さんの個性が感じられる空間が広がっています。

心地よい音楽が流れ、どこか懐かしい雰囲気に包まれる店内は、お豆腐好きだけでなく音楽好きの方にとっても居心地の良い場所です。

創業から19年。ご家族で営むこのお店には、豆腐作りを通じて地域とつながり続ける温かい物語があります。

地元で生まれ、地元で育てた豆腐屋

「父がもともとお豆腐屋さんに勤めていて、独立してこの店を始めたんです」と店主さんは話します。
店主さんは生まれも育ちも大和市。地元への思いが強く、「この場所で豆腐を作り続けたい」という気持ちから、今も鶴間で毎朝の仕込みを欠かしません。

「仕込みを始めるのは朝5時くらいです。お豆腐屋としては遅いほうなんですよ」と笑う店主さん。
住宅街という立地を気遣いながら、静かな朝の空気の中で大豆を煮て、搾って、固めていく。
そんな丁寧な仕事の積み重ねが、豆畑の味を支えています。

「豆畑」という名前に込めた原点の想い

「豆畑」という店名は、店主さんのお父様の故郷である新潟に由来しています。

「父の田舎ではお米と大豆を作っていて、“もし自分でお店を持つなら豆畑がいいな”と昔から言っていたんです」と話します。
その言葉を受け継ぎ、現在も豆畑では新潟産の大豆を使用しています。
「父の地元なので何度も足を運んだことがあります。どんな場所で育った大豆かを自分の目で確かめているからこそ、安心して使えるんです」と店主さん。
原料の顔が見えるからこそ、味にも自信を持って届けられるのです。

木綿豆腐とがんもどきで、冬の食卓をあたたかく

季節が少しずつ移り変わるこの時期、豆畑で人気なのは木綿豆腐とがんもどきです。

「寒くなると鍋の季節ですからね。木綿豆腐は煮崩れしにくくて、がんもどきと一緒に入れると味がしみておいしいですよ」と店主さんは教えてくれました。

しっかりとした食感と、やさしい大豆の甘み。それが豆畑の豆腐の魅力です。

おすすめの食べ方を伺うと、店主さんはこう答えてくださいました。
「冷ややっこに醤油をかけて食べるのが好きです。実は、冷たい豆腐より“常温”の方が大豆の味を一番感じられておいしいんですよ。冷蔵庫から出して少し置いてから食べるのがオススメです」
そんな一言からも、豆腐への深い愛情と、素材を大切にする思いが伝わってきます。

大和のやさしさが詰まった一丁 絹ごし豆腐

「とうふ工房 豆畑」の絹ごし豆腐は、口に入れた瞬間にわかる“手作りのやさしさ”が魅力です。

きめ細かくなめらかな舌ざわりで、すっと舌の上でほどけていく食感。そのあとにふわりと広がる大豆の香りと自然な甘みが、素材の良さを物語っています。

使われているのは、店主のご両親の故郷・新潟で育った大豆。どんな土地で、どんな人が作っているのかを店主自身が知っているからこそ、味にも誠実さが滲みます。

冷ややっこで食べれば、まるで豆乳をそのまま固めたような豊かなコク。店主さんのオススメ通りに少し常温に戻して味わうと、大豆本来の旨みがさらに引き立ちます。醤油をほんの少したらすだけで十分なおいしさです。

華やかではないけれど、毎日の食卓に寄り添うやさしい一丁。
「豆畑の絹ごし豆腐」は、大和のまっすぐな人柄をそのまま映したような味わいです。

街の豆腐屋さんがつなぐ、あたたかな交流

豆畑には、長年通う常連さんはもちろん、最近では健康志向の若い家族連れやベジタリアンの方も増えているそうです。
「手作りや食の安心にこだわる方が多いですね。みなさん本当に優しくて、地域全体で支え合っている感じがします」と店主さんは微笑みます。

特に印象に残っている出来事を伺うと、こんなエピソードを話してくれました。
「東日本大震災のあと、被災地にお豆腐を送ったことがあるんです。その後、お店に来てくださった被災地の方から“ありがとう”って言われた時は、本当にうれしかったです。」

小さな豆腐屋さんのまっすぐな優しさが、遠くの誰かを励ますこともある。
その姿は、「食で人と人をつなぐ」豆畑らしさそのものです。

大和市という街に根を張って

店主さんが語る大和市の魅力は、「暮らしやすさ」と「人の温かさ」です。
「商業施設もあるし、役所も近い。交通の便もいい。とても住みやすい街だと思います」と話します。
駅前のにぎわいと、住宅地の穏やかさ。そのバランスが、大和市ならではの心地よさを生み出しています。

また、お父様は現在も桜ヶ丘方面でラッパを吹きながら移動販売を続けているそうです。

「顔を合わせて“今日もありがとう”と声をかけてもらえるのがうれしいですね。そういう人とのつながりが、この街には残っているんです」

豆畑は、ただ豆腐を売るお店ではなく、地域の暮らしの中に自然と溶け込んだ“街の風景”のひとつになっています。

大和で暮らす幸せを、日々の食卓に

最後に、大和市に住む方々、そしてこれからこの街に住もうと思っている方へのメッセージを伺いました。

「お豆腐屋さんって、全国でもどんどん少なくなってきているんです。スーパーでしか見たことがない方も多いと思いますが、ぜひ一度、本物のお豆腐を見に、食べに来てください」

その言葉の奥には、“本物を知ってほしい”という誇りと、“この街で支え合って生きていきたい”という温かな想いが込められています。

毎朝、大和の空の下で湯気を立てながら豆腐を作り続ける「とうふ工房 豆畑」。
そこには、手作りの味を守る家族の姿と、おいしい香りに誘われて訪れる地域の笑顔があります。

大和市に住んでいる方も、これからこの街に住んでみたい方も、「豆畑」のお豆腐を味わえば、きっと大和という街をもっと好きになれるはずです。

とうふ工房 豆畑(まめばたけ)
住所:神奈川県大和市西鶴間1-22-12
アクセス:小田急江ノ島線「鶴間駅」西口から徒歩約5分
TEL:046-277-4102
営業時間:9:00-19:30
定休日:第1日曜日、第3日曜日、(第5日曜日)
駐車場:2台

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。