昔の暮らしを感じる憩いの古民家「下鶴間ふるさと館」

趣味の散歩をしていると、地元なのに知らなかったステキな場所を見つけることができます。

大和市下鶴間にある「下鶴間ふるさと館(旧小倉家住宅)」も、散歩の寄り道で見つけたステキな場所の一つ。
築150年以上の古民家を活用した文化施設であり、地域の歴史や文化を伝える大切な場所なんです。

今回は、「下鶴間ふるさと館」の歴史に触れつつ、その魅力をご紹介していきます。

昔ながらの日本家屋で、ほっと一息

下鶴間ふるさと館があるのは、国道246から少し奥まった住宅街の中。
小田急片瀬江ノ島線「鶴間駅」からは徒歩約20分ほど。田園都市線「つきみ野駅」からで約20分ほどで行くことができます。
施設の目の前にバスの停留所があるので、遠方からの方はバスの利用がおすすめです。

入口はこんな感じです。

入口から館内に一歩足を踏み入れると、まるで時間が止まったかのような静かな空間。
広々とした土間、太い梁、漆喰の白い壁、昔ながらの補修をした障子。そのどれもが、先人たちの暮らしの知恵と温もりを感じさせてくれます。

下鶴間ふるさと館の建つこの辺りは、江戸時代「下鶴間宿」と呼ばれる宿場町でした。
東海道からは離れているものの、大山参詣で重要な「大山道(矢倉沢往還)」と「八王子道」が交差する場所です。日本地図を徒歩で作り上げたといわれている伊能忠敬の測量隊も、この下鶴間宿で測量をしたとされています。

展示スペースには、「下鶴間宿」のジオラマや、江戸時代後期の武士であり画家、蘭学者でもあった「渡辺崋山」のスケッチメモ、明治期の下鶴間宿の写真などが展示されています。

こんなに身近にあるのに、教科書で見聞きするような歴史を体感できるなんて不思議な気分…当たり前のことですが、この地域も歴史を刻んでいるんだなと思うと感慨深いですよね。

江戸時代のドラッグストア?旧小倉家

この地域だけでなく、この施設自体にももちろん歴史があります。

建物は、「旧小倉家」住宅の母屋と土蔵。
小倉家は、この地で多くの品物を扱う雑貨屋さんを営んでいた商家です。中でも医療・医薬品の品数が豊富だったそうで、今でいうところの「ドラッグストア」のようなお店。そのため、通常の民家とちがい間取りの中に「みせ」の部分があります。

母屋は安政3年(1856)に建築された、宿場の商家建築。神奈川県内でも数少ない建築なのだとか。土蔵は、大正7年(1918)に復原されたものです。

みせ部分には、番頭さんが座る帳場机と呼ばれる低い机と、薬箪笥があります。

薬箪笥は復元模型とのことです。

「征露丸」など昔の商品も展示されていて、現在の「正露丸」と漢字がちがう点などの理由も書かれていました。征露丸の薬品名は、日露戦争中に陸軍で用いられていた薬であることから、「征」の字が用いられていたそうです。
往時の医薬品がどんなものだったのかがよくわかり、興味深い展示でした。

床の間には、祖母が使っていたような古い長持(ながもち)と呼ばれる収納箱があります。

屋根裏に上る急な階段や囲炉裏のある板の間などもありました。

これらを目にすると、不思議と懐かしい気持ちになります。心のふるさとポイントを刺激するからでしょうか。

四季を感じる庭の魅力

ふるさと館の魅力は、建物だけではありません。手入れの行き届いた庭も訪れる人の心を和ませてくれます。

春には桜、夏には涼しげな苔、秋には紅葉、冬には白い雪。季節ごとに異なる表情を見せてくれるんです。
訪問したのは2月の寒い日ですが、よく晴れていたので庭の木々も、いきいきして見えました。

縁側から花を見ることができるように植えられています。今から花の季節が楽しみです。

立派な梅の木。もうすぐ花の季節です。

私の一番のおすすめは、こちらの縁側。

縁側に座って、風に揺れる木々の音を聞きながらゆっくりと過ごす時間は、日常の喧騒を忘れさせてくれる特別なひとときです。

玄関脇には大きな柚子の木があり、ちょうど収穫時期でした。

収穫された柚子は、来館者に無料で提供されていました!

受付の方に「1個といわず、2.3個持って帰るといいですよ。」と声をかけていただいたので、ありがたく2個いただくことに。晴れやかな黄色とすがすがしい柚子の香りは、ご近所でおすそ分けをいただいたような温かい思いやりを感じました。

地域の行事を伝える、心温まる交流の場

下鶴間ふるさと館では、季節ごとにさまざまな展示もおこなっています。

今回訪れた2月は、昔ながらの節分の「柊鰯(ひいらぎいわし)」などの飾りが施されていました。

焼いたイワシの頭をヒイラギにつけて玄関に飾る「柊鰯」。今のマンション暮らしなどではなかなか見ることのできないものです。知らない方も多くなってきていますよね。

柱から顔をのぞかせる鬼の人形。かくれんぼしている様子がかわいらしく、ほっこりとします。

歴史のあるものを展示するだけでなく、先人たちの知恵や技術などを、次の世代へと繋ぐ場となっているように感じました。地域の大事にしていきたい宝物ですね。

受付にいる地域の方から、時々金魚の品評会が開催されることも教えていただきました。このような雰囲気の中で開催すると、金魚の可憐さもより引き立ちそうです。
人の交流イベントに利用されているのもステキですね。

「下鶴間ふるさと館」では、2025年4月1日から展示方法が変わります。
休館日以外はいつでも旧小倉家屋内に入って見学が可能でしたが、4月からは外観のみの展示に変更となります。屋内の見学は、月2度ほどに変更となるそうです。

今のところ、内観見学日程などの詳細はまだ未定とのこと。外観だけならば、4月以降も変わらず無料公開とのことですので、安心してください。
詳細は、公式HPなどで確認してみてくださいね。

忙しない日々の中で、ふと立ち寄りたくなる「下鶴間ふるさと館」。
みなさんも、ぜひ一度訪れてみてください。特別な時間を過ごすことができますよ。

下鶴間ふるさと館(旧小倉家住宅)
住所:神奈川県大和市下鶴間2359番地5
アクセス:小田急片瀬江ノ島線「鶴間駅」から徒歩約20分
東急田園都市線「つきみ野駅」下車徒歩約20分
「鶴間駅東口」より神奈中バス下鶴間経由で「下鶴間」バス停下車すぐ
「中央林間駅」からコミュニティバス「のろっと」B系統「下鶴間」停留所下車すぐ
TEL:046-272-6556
※2025年4月1日以降:046-278-3688(つる舞の里歴史資料館)
開館時間:10:00-16:00
定休日:月曜日・火曜日(祝日の場合は開館)
祝日の翌日(土日.祝日は開館)
年末年始(12月29日~1月3日)
入館料:無料(一部の特別展示・体験は有料)※2025年4月以降変更有
※「母屋のざしき・おくざしき・なんど」利用は要予約。別途1時間300円(1部屋あたり)
駐車場:なし

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。