大和市にこんなに深くて静かな森があるなんて……。それが「深見歴史の森」です。
市街地にありながら、ひとたび足を踏み入れると、そこはもう別世界。
小鳥のさえずり、風に揺れる木々の音、そして足元にはかつての城跡が静かに広がっています。ここは、かつて山田伊賀守経光が築いたといわれる深見城の跡地。
その面影はかすかですが、森の奥に分け入ると、どこか「戦国時代」が息づいているのを感じます。さあ、歴史と自然が調和するこの地で、静かに時間旅行してみませんか?
深見歴史の森の中にある深見城址

ひっきりなしに車が行き交う国道246号線から数分歩くだけで、鳥のさえずりと風の音に包まれる木々の中へと導かれると、そこはもう森。
目立つ石垣や天守はないけれど、足元の地形や小さな案内板が、ここに確かに城が存在していたことを教えてくれます。
森の中にひっそりと残る城跡

この森の中には深見城の跡地があり、今もひそやかに眠り続けている不思議な場所です。森の中に主郭、空堀、土塁などが点在し、かつての防御構造を今もそっと伝えています。

注意深く見れば、虎口(こぐち)と思しき場所や、外敵の侵入を防ぐための空堀の名残を発見できます。
ここを戦国の武将が馬を駆っていたのかな、と想像するのも楽しいものです。
防御構造の痕跡と、地形を活かした山城の面影

森に入ってすぐ、最初はどこが遺構なのか正直わかりませんでした。でも、「天竺坂(てんじくざか)」と書かれた説明板や、ロープで立ち入りが制限されている場所に出会い、「ああ、ここが!」とじわじわ実感が湧いてきました。

前に「つる舞の里歴史資料館」のジオラマを見ていたおかげで、現地の地形と結びつき、なるほどと納得できる体験でした。
自分の目と感覚で「ここが当時の……?」と想像しながら散策できるのは、他にはない魅力。まるで自分が考古学者であるかのような気分になれます。
荒城の面影と自然の息吹

現在の深見城址は、はっきりした城の形こそ残っていませんが、それがまた趣深いところ。朽ちた土塁の影、雨で削られた空堀の曲線、そしてそこに絡みつくように育った木々やシダ。
まるで「荒城の月」の詩のように、朽ちてなお残る美しさを感じさせてくれます。
朽ちかけた遺構に土塁や空堀にロマン

遺構の多くは草木に覆われ、意識して見ないと通り過ぎてしまうほど控えめです。苔むした斜面、浅く窪んだ地形……これが空堀かな?と想像しつつ、歴史の痕跡をたどるような探索ができます。
はっきりと「ここが遺構です!」とは言わない静かなたたずまいが、逆にリアリティをもって迫ってきます。
薄れゆく歴史の切なさと自然の美しさ

かつての戦の場が、今では野鳥がさえずる穏やかな森に変わっている。
この対比こそが深見城址の最大の魅力です。人の営みが過去のものとなり、自然の力がその上に重なっていく……
それはまるで時間の流れが目に見えるような感覚でした。切なさと静けさ、そして癒しが共存する場所です。
そんな風景に立ち止まり、耳を澄ますと、森の静寂と鳥のさえずりだけの世界に没入します。時折吹く風のざわめき、落ち葉が落ちる音、遠くかすかに聞こえる車の走行音。
自然と人の生活が交差するこの場所は、現代と過去が同時に存在する不思議な空間なのです。
記憶に残る鮮やかな5月の森の光景

5月の森は、日差しが強くなってきたとはいえ、木々の葉が日光をやわらかく遮り、どこか薄暗くて涼しい空気が流れていました。
そんな中、ふと見上げると葉の隙間から光の帯が差し込み、まるで舞台の照明のように地面を照らしていました。静寂と光のコントラストが心に残ります。
光の帯に舞う幻想的な黒アゲハ蝶

その光の帯の中に、黒いアゲハ蝶がふわりと現れました。1頭、2頭……ふわふわと、光をまといながら舞い踊る姿はまるで夢のよう。
私はその美しい光景に見とれてしまい、カメラを構えることすら忘れてしまっていました。静寂の中に現れた小さな舞の贈り物。
写真には残っていないけれど、心に深く刻まれた鮮やかな記録。偶然が重なって生まれた出会いだからこそ、自然の中で過ごす時間の尊さを改めて感じました。
散策前に知っておきたい3つのポイント

散策ってほんの少し準備すると、余計なわずらわしさを感じることなく楽しめちゃいます。私のおすすめポイントを3つ紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.服装や持ち物はこんな感じ

歩くのは土の道が中心なので、滑りにくい靴が必須です。サンダルではなくスニーカーがおすすめです。そして、できれば動きやすい長袖と長ズボン、多少汚れてもいい服装がベター。
虫よけスプレーも忘れないでください。5月時点でも、結構蚊がいました。
カメラやスマホ、軽い飲み物を持っていれば万全です!

車で訪れる方には、専用駐車場も完備されていますので安心です。
2.大和市つる舞の里歴史資料館で知識を深めよう

もし「もっと深見城のことを知っておきたい!」と思うなら、ぜひ「大和市つる舞の里歴史資料館」に足を運んでみてください。
ここには、深見城のジオラマ模型があり、実際の地形がどう城郭として活用されていたのかを一目で把握できます。

実際の森を歩くと「この場所があの模型の……!」と気づく瞬間が訪れます。そのリンクが楽しく、体験の質が何倍にも膨らむのです。
見る・知る・歩くという三段階で、深見城址の魅力をじっくり味わえるのが、この森の醍醐味です。
3.現地では五感を最大限に使って楽もう

森の空気を深く吸い込み、木漏れ日を見上げて、鳥のさえずりに耳を傾けましょう。
香る草、ふかふかの落ち葉と湿った土の感触、そしてふと立ち止まったときの静けさ。
そのすぐそばを物流や営業の車が忙しく行き交う国道がある風景は、どこかシュールで不思議。静と動の対比が印象的です。
そのすべてが、日常から少し離れた時間を演出してくれます。急がず、立ち止まることを楽しんでみてください。
静かな森に残る記憶の城

深見歴史の森には、静かな癒やしと、歴史を発見するわくわくが詰まっています。はっきりとした見どころというより、それぞれが自分の感覚で感じる「気づき」が宝物になる場所です。

自然の中を歩きながら、大和市の静かな森に残る忘れ去られた戦国の記憶を訪ねてみませんか?ふかふかの落ち葉を踏みながら進む時を超える旅、ぜひあなたも体験してみてください!
深見歴史の森
住所:神奈川県大和市深見76
アクセス:小田急江ノ島線「大和駅」からバスを利用
・神奈中バス(間10)「一の関」下車 徒歩約11分
・コミュニティバス(やまとんGO深見)「一ノ関公園」下車 徒歩約9分
問い合わせ先:046-260-5451(環境共生部 みどり公園課 みどり推進係)
駐車場:44台